折りたたみ傘は画期的な発明でした。雨が止めば荷物になってしまう存在でしかなかったデメリットを克服し、持ち歩くための携帯性を両立してくれました。日本では年間100日以上の雨が降るので、朝に晴れていても夕方からは雨天になるかもしれません。春から夏にかけては高気圧と低気圧が衝突することで天気が不安定になり、夏場は太平洋高気圧の発達により水蒸気が上昇し、上空で冷やされて雷雨を呼ぶのです。

春から秋にかけてはだから、夕方の16時以降に天気が急変することが少なくありません。ダンディズムの本場である英国では、傘は持ち歩く小道具であり、細巻きにしてプリーツを薄くしく保ちます。雨が降ってもベンタイルやコットンギャバジンのレインコートの襟を立てて、傘を開かないのがダンディズムの真骨頂です。ボーブランメル卿は、紳士たるもの王の権威にも跪かず雨が降っても傘をささず博打の借財は綺麗に清算すると、身を持って教えてくれました。

おしゃれとはやせ我慢に通底した精神性の表れなのです。折りたたみの傘は実用主義一点張りであることは、日本では当然のことになります。しとしと降り止まない七つ下りの雨は、男女の恋愛話にもたとえられる情緒ですが、日本特有の濡れる雨には軽量な折りたたみを一本携帯しておくことが最良の準備です。現在は軽量で頑丈で、風が吹いても適度にたわむしなやかな素材で作られているので、持ち歩くのも苦ではありません。

軽量な一本は不安を払しょくしてくれる、手放せないマナーです。